インタビュー

「いちいち役員の許可が必要な会社なら、いる意味がない」。元学生起業家があえて選んだ既存ベンチャー→経営者の道

経営者として生きるべく、学生時代から起業を経験してきた阿部洸希氏。しかし大学卒業後は創業5年超のBEARTAILへジョインする道を選び、出張手配・管理業務を支援する「Dr.Travel」事業の責任者としてサービス展開に奔走している。起業家志望の阿部氏は、なぜBEARTAILに身を置くのか。その背景には「最速で価値を生みたい」という想いと、創業者並みの裁量を新規事業で得られる同社ならではの体制があった。

〈Profile〉
阿部 洸希(あべ・こうき)
株式会社BEARTAIL Travel事業部長
慶應義塾大学経済学部卒業。大学時代にストリートダンスやビジネス講座に関わる事業を立ち上げる。就職活動では外資系のコンサルティングファームや投資銀行などから複数の内定を獲得するものの、知人の紹介で知り合ったBEARTAILの黒﨑賢一社長から新規事業責任者ポストのオファーを受け、2019年2月に入社。

投資銀行もコンサルも「これはないな」と辞退。BEARTAILに入ったのは「起業家として黒﨑をベンチマークするため」

――大学時代に自身で事業を立ち上げていますが、いつ頃から「経営者になりたい」という想いを抱いていたのでしょうか。

阿部:叔父がある大企業グループの社長をしていたこともあって、小さな頃からなんとなく経営者の生き方にはあこがれていたように思います。ただそれ以上に、自分自身のリーダーとしての原体験が大きいかもしれません。

学生時代にはブレイクダンスのチームを3つ立ち上げてリーダーを務めていました。そんなふうに常にリーダー役を任されていたので、自然と「ビジネスの世界でもリーダーになりたい」と思っていました。学生のまま事業を立ち上げたのも、そんな想いからでした。

――就職活動では外資のコンサルティングファームや投資銀行などを志望したのですね。

阿部:そうした企業なら将来の起業に向け、早くリーダーの経験を積めると思ったからです。まあ高収入でブランドもあり、そこで働いていればモテそうな点に一時惹かれたのも事実ですが(笑)。

でも実際に中にいる人に話を聞いてみると、「最初は下積み」みたいな話も多くて…。「あ、これはないな」と思ってしまいました。何社かから内定もいただいていましたが、最終的には全て辞退しました。

――BEARTAILと出会った経緯は。

阿部:同じ投資銀行に内定をもらっていた知人の紹介で、社長の黒﨑と知り合ったんです。一緒に食事に行ってみたのですが、そこでいきなり「出張手配を自動化する新規事業を考えているんだけど、やってみない?」と言われて、衝撃でした。

僕は僕で、海外留学した際にカジノで全財産をすってしまった話をしました。それが黒﨑には大ウケだったんですよね。リスクテイカーが大好きなのかもしれません。その場ではもちろん、「自分で事業をやりたいと思っている」という想いも伝えました。そうして出てきたのが新規事業をいきなりやらせてもらえるという話だったので、どんどん黒﨑という経営者と、BEARTAILという会社への興味が強くなっていきました。

――それだけ魅力的なオファーだったということですね。

阿部:その時考えたのが、どの道を選べば最速で世の中にない価値を生み出せるかということ。後に「Dr.Travel」となるこの新規事業は、BEARTAILの既存事業である経費精算関連サービスとの相乗効果が大きいし、培われてきたノウハウや社内リソースもある。最速で価値を生むにはまたとない環境だったんですよね。

ただ、それ以上に大きかったのが、黒﨑の存在かもしれません。起業家を目指すなら、この人はベンチマークしておくべきだと思いました。ゼロから事業を立ち上げ、この規模まで大きくしている時点で数パーセントしかない可能性を実現しているし、社会人経験なしで最短ルートでここまで来ている(※黒﨑社長は筑波大学在学中の2012年にBEARTAILを設立)。

彼は打席に立つ回数が普通の人の15倍くらいはあるんじゃないかと思うんです。「これを試してみよう」と思いつく数が半端ではないし、それを実行に移すのも速い。次の柱となり得る新規事業を初めて会った学生に任せるなんて、普通だったらまず決断できないですよね。

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競合サービスは「イケてない」。若さゆえに勝算あり

――では、現在阿部さんが事業部長を務めるその新規事業のDr.Travelについて教えてください。

阿部:出張手配、管理、精算の機能を網羅したサービスです。出張手配が楽にでき、誰がどこへ行きいくら使ったかを一括管理するとともに、精算を自動化して作業時間を一気に短縮します。

コーポレートガバナンス強化の観点ではカラ出張など不正を防止し、危険な渡航先へは行かないようにするなど安全面の管理も容易になります。こうした価値を適正な価格で提供することを目指しています。

開発にあたり、出張手配に関連する既存サービスを調べたのですが、「便利なものはないな」という印象でした。未だに電話で予約しなければならないサービスがあり、一方でオンラインで予約するセルフブッキング型のポータルサイトがあるものの、機能が増えすぎていて手間ばかりかかるように感じました。

自分ならもっと便利で手軽に使えるサービスを作れると思いました。この領域の競合は、旅行代理店系なら40代や50代の人、ウェブ系なら30代が中心になっているところがほとんどでしょう。おそらく自分は最も若いプレーヤーの一人で、柔軟に素早くアクションできる強みがある。かつセルフブッキング型を当たり前のように使ってきた世代としては、既存サービスの「イケてなさ」がよく分かるんです。

ホテル予約サイトもiPhoneも普及しきった時代に育ってきましたから。

今年はいくつか大きなリリースを出す予定です。その一つが、この領域で国内初となるチャットツール「Slack」との連携。SlackのアカウントでそのままDr.Travelを利用できるため、わざわざDr.Travelにログインする必要がなくなります。お客さまの利便性を第一に考え、Dr.TravelそのものはUIを持たない「ノーUI化」の方向で進めようとしており、今回のリリースはその一環です。

学生起業時の失敗による教訓。仲間集めには「妥協しない」

――Dr.Travelの展開を進める中で苦労していること、課題に感じていることは何でしょうか。

阿部:「誰とやるか」にこだわりすぎて、事業部のメンバーをなかなか増やせないことですね(笑)。

背景には、大学時代にストリートダンスの事業を立ち上げた際の苦い経験があるんです。当時は僕と同じようにダンスが好きな仲間と一緒に事業を作り、そのままやっていこうと考えていました。しかし事業は失敗しました。原因は人でした。ダンスが好きだというメンバーをとりあえず集めた形だったので、コミットメントの度合いはバラバラ。最後はみんな「就活するよ」と言い出して、そのまま解散してしまいました。

そこで学んだ教訓が「誰とやるか」の重要性です。今は一緒にやるメンバーに対するこだわりが強くて、黒﨑から紹介された人でも断ることがあるくらいです。

理想を言えば、僕と同じ熱量で事業に取り組んでくれる人と出会いたいですね。事業とは関係ないところで資格の勉強をしたり、副業をしたりするのは、率直に言って避けてほしい。100%フルコミットしてほしいんです。

そんなふうに暑苦しいことを言うものだから、なかなか仲間が見つかりません(笑)。でも、ここは妥協せずに思いを伝えていきたいと考えています。

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社内政治がなく、予算も自由。「創業者並みの裁量がある」

――多くの企業では、新規事業責任者が既存事業の都合に振り回されてしまうことも多いと思います。「BEARTAILだからこそ新規事業を進めやすい」と感じる点があれば教えてください。

阿部:既存事業に引っ張られたり邪魔されたりすることは、BEARTAILでは一切ありません。キャッシュの面でも、お客さまのリードの面でも、既存事業にとても助けられています。開発もしかりです。申込書の電子化など、すでに経費精算の分野で取り組んでいたものをどんどん導入しています。そうした意味では、今はむしろ新規事業側ばかりが得をしている状況かもしれませんね。

黒﨑とは意見が食い違うこともありますが、基本的にはこの事業のオーナーである僕の意志を尊重してもらっています。だから社内に人的な障壁はありません。社内政治もないし、創業者並みの裁量を新規事業責任者に割り当ててくれている。予算も自由な枠が与えられています。

もし、いちいち役員に稟議を上げて許可を取らないといけない環境なら、僕はここにいないでしょうね。

――今後、BEARTAILでどんなキャリアを築いていきたいと考えていますか。いずれは起業家として社外へ飛び出すことも想定されているのでしょうか。

阿部:当初、会社とは3年契約だと考えていました。実際にそんな契約を結んでいるわけではないのですが、あくまでも自分の中の気持ちとして、です。その3年で結果を出し、その後は自分のテーマで自分の会社をやろうと思っていました。

でも正直に言って、今はその考えが変わってきているんですよね。BEARTAILが大きくなればなるほど、自分が挑戦できるチャンスの規模も大きくなる。そこにやりがいを見出しているんです。常に大きなインパクトを目指し、最速でやるという価値観がぶれない組織だからこそ、まだまだここにいたいと感じるのかもしれません。

それに、起業家としてベンチマークしている黒﨑をまず追い越したいという気持ちがあります。

――阿部さんと同じように起業家や新規事業リーダーを目指す若い人も多いと思います。そんな人は、BEARTAILへジョインすることで何を得られるでしょうか。

阿部:起業そのものをしたいと本気で考えているなら、さっさと起業するのがいちばんいいと思います。また、既存のビジネスに可能性が感じられるなら、企業にジョインすればいいですよね。

一方、起業だけにこだわらず新規事業を良い環境でやりたいのなら、ぜひともBEARTAIL に来てほしいです。もしTravel事業部に来てくれたら、「やりたいことをすべて自分で決めていい」という最高の自由とやりがいを実感できるはずです。

この事業を成長させ、世の中にインパクトを与えることが目的なので、そのための手段は基本的に自分で決めて構いません。もちろん僕とディスカッションして決めてもいいし、自分で考えてもいい。これは大きなチームになっていくにつれて難しくなるはずなので、今しか許されない特権なのかもしれません。

また、グローバル展開を絶対に成し遂げるという強い気持ちを持っているので、海外で戦うシーンも早々に経験できると思います。自分の常識が通用しない場所でどのように対応し、事業を展開していくか。他ではなかなか得難い経験ができるのではないでしょうか。

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